臨床研究 CLINICAL RESEARCH

プロバイオティクス

犬の慢性腸症に対する
プロバイオティクスの
効果に関する研究

概要

当院にて慢性腸症と診断された犬に対し、標準治療+プロバイオティクス、標準治療+プラセボの二群に分け、臨床症状、腸内細菌叢などについて評価します。

背景・目的

犬の慢性腸症は頻繁に遭遇する慢性消化管疾患であり、食事療法、プレドニゾロンなどで治療されてきました。近年、腸内細菌叢と慢性腸症の関連性が注目されており、腸内細菌叢により積極的に介入することの重要性が示唆されています。海外にはVivomixxやVSL#3といった犬の慢性腸症に対して有効なプロバイオティクスが販売されていますが、日本国内で利用可能なプロバイオティクスでは、犬の慢性腸症に対する有効性は証明されていません。
Sivomixxは先述のプロバイオティクスと類似した菌種、菌数を有する国内で入手可能なプロバイオティクスであり、犬の慢性腸症に対する有効性が期待されています。本研究では、犬の慢性腸症に対するSivomixxの有効性に関し、プラセボを用いた比較臨床研究によって多角的に検討することを目的としています。

対象

当院にて各種スクリーニング検査にて慢性腸症と診断された犬

除外基準

  • 内視鏡検査によって消化器型リンパ腫など、他の疾患であると診断された犬
  • 担当医によって研究の継続が不適切であると判断された犬

内容

  • 通常の手順にて慢性腸症と診断された犬
  • 低アレルゲン食、プレドニゾロンを用いた標準治療を開始
  • Sivomixx群、プラセボ群に無作為に振り分けて上記治療と合わせて投与
  • 臨床症状、血液検査などを3ヶ月後までモニタリング
  • 初診時、最終評価日に血液、糞便を採取し、糞便のメタゲノム、短鎖脂肪酸などを解析
  • 研究にご協力いただいた場合、プロバイオティクスは無償でご提供、3ヶ月後の再診時の費用割引あり

問い合わせ先

research-CE@vsec.jp
担当:[内科]福島 建次郎

早期慢性腎臓病療法食

早期慢性腎臓病の猫に対する
療法食の比較試験

概要

慢性腎臓病(CKD)は猫で非常に多くみられる疾患であり、特に高齢になるほど発症リスクが高まります。CKDは進行性であり、現時点では根治させることはできません。そのため、食事療法によって進行を抑え、QOL(生活の質)を維持することがきわめて重要です。
本試験では、早期慢性腎臓病(IRISステージ1〜2)の猫を対象に、特別に設計された腎臓病療法食の効果を検討します。対象となる猫には、1年間にわたり試験食を与えていただき、3か月ごとに診察を行い、体調と腎機能の評価を行います。
なお本試験はVSEC臨床研究倫理委員会の承認を受けています。

背景・目的

慢性腎臓病(CKD)は猫に高頻度に認められる疾患であり、特に高齢猫において発症リスクが増加します。実際、15歳以上の猫の約8割が腎機能に何らかの異常を抱えていると報告されています。CKDは進行性であり、現時点では根治させることはできません。そのため、食事療法によって進行を遅らせ、QOL(生活の質)を維持することがきわめて重要です。
こうした背景から、本試験では早期慢性腎臓病(IRISステージ1〜2)の猫を対象に、特別に設計された腎臓病療法食の効果を検証します。3種類の療法食を比較することで、体重や筋肉量を適切に維持しながら腎機能の保全を目指し、QOLと生存期間をより長期にわたり延ばすための栄養学的アプローチを明らかにすることを目的としています。

対象

  • 年齢2〜16歳
  • 健康状態が良好(BCS ≧2/5)
  • SDMA >13.5 μg/dL
  • 以下のうち1つ以上を満たす
    • Cre >1.6 mg/dL
    • USG <1.035
    • UPC >0.4
    • 触診において腎臓に形態異常がある

除外基準

  • IRIS stage 3以上のCKD
  • CKD以外の全身性疾患がある
  • 手術を控えている
  • 妊娠している
  • 通院・診察に強いストレスを感じている

内容

  • 本試験は 無作為化二重盲検試験 として実施されます。猫は無作為に(ランダムに)A・B・C のいずれかの試験食群に割り当てられます。試験食はいずれも、欧州獣医栄養学専門医 Dr. Marco Fantinati(ファルミナペットフーズ・ジャパン株式会社)が設計したもので、安全性が確認され、総合栄養食としての基準を満たしたウェットフードです。
  • この試験にご参加いただく場合、試験食は1年間、無料でご提供いたします。
  • 試験期間は 1年間 です。初診・3か月・6か月・9か月・12か月にご来院いただき、診察と検査を行います。検査内容は身体検査、血圧測定、血液検査、尿検査です。ご希望があれば、初診時に超音波検査(実費)を追加することも可能です。また、毎月ご自宅で体調に関するアンケートにご記入いただき、健康状態を記録していただきます。
  • 本研究への参加は完全に任意です。試験途中であっても、ご家族のご希望により いつでも中止することが可能です。

参加に当たってのご注意

  • 試験期間中は、割り当てられた試験食のみを与えていただき、間食や他のフード・サプリメントの使用はご遠慮ください。
  • 診察や血液検査など、通常診療にかかる検査費用はご家族のご負担となりますので、あらかじめご了承ください。
  • 試験途中であっても、以下のような場合には参加を中止していただきます。
    • CKD が進行した場合
    • 副作用を認めた場合
    • 他に治療を必要とする病気やけがを認めた場合
    • 試験食以外のフード・間食やサプリメントを与えた場合
    • 2回以上連続して試験食を食べなかった場合

問い合わせ先

research-ckd@vsec.jp
担当:[内科]福島 建次郎/井上 亜希子

尿路上皮癌

犬の尿路上皮癌に対する
放射線治療とがん免疫療法の有効性に
関する臨床試験

概要

犬の尿路上皮癌(移行上皮癌・前立腺癌)は尿路に発生する悪性腫瘍であり、犬の悪性腫瘍の中でも特に悪性度が高く、予後不良であることが知られています。治療には外科手術、放射線治療、内科療法(NSAIDs、抗がん剤、分子標的薬)が行われています。外科手術で腫瘍を完全に摘出できれば根治の可能性はありますが、再発・転移率が非常に高く、また、すでに転移がある症例では外科手術の適応となりません。放射線治療も有効性が確認されていますが、照射部位に限局した効果にとどまり、全身的な効果は期待できません。そのため、全身に作用する内科療法を組み合わせることで、より効果的な治療が期待されます。しかしながら放射線治療と組み合わせる最適な薬剤は未だ確立されていません。
モガムリズマブは、腫瘍に対する免疫機能を高めることで抗腫瘍効果を示す新しい薬です。これまでの研究で、犬の尿路上皮癌に対して副作用が少なく、単独使用でも高い治療効果を示すことが報告されています。そのため、放射線治療とモガムリズマブを組み合わせることでより高い治療効果を発揮することが期待されますが、両者を併用した際の有効性や安全性は明らかになっていません。本試験は、放射線治療とモガムリズマブの併用療法の有効性と安全性を明らかにすることを目的としています。
本臨床試験は、東京大学獣医臨床病理学研究室との共同で実施いたします。

背景・目的

犬の尿路上皮癌(移行上皮癌・前立腺癌)に対する治療は、主に外科手術、放射線治療、内科療法(NSAIDs、抗がん剤、分子標的薬)が行われています。外科手術により腫瘍をすべて摘出することができれば根治となりますが、犬の尿路上皮癌は悪性度が高く、外科手術を行っても再発や転移を起こしてしまうことが多いです。また、既に転移を起こしている症例では外科手術は行えません。放射線治療は、身体の外側から腫瘍部位に向けて放射線を照射することでがん細胞を攻撃する治療法です。放射線治療は犬の尿路上皮癌に対して有効性が確認されている治療法ですが、腫瘍部位のみに放射線を照射するため、全身には作用しません。そのため、内科療法と組み合わせることで尿路に存在する腫瘍部位だけでなく全身にも作用させることができると期待されますが、現在のところ放射線治療と組み合わせる最適な薬剤は確立されていません。
モガムリズマブは患者の腫瘍に対する免疫機能を高めることで抗腫瘍効果を示す新しい薬です。具体的にはCCR4という分子を阻害することで、制御性T細胞と呼ばれる免疫抑制細胞の機能を抑えて腫瘍に対する免疫応答を増強する分子標的薬です。この薬は人では既に医薬品として承認されています。これまでの研究で、犬の尿路上皮癌に対して副作用が少なく、治療効果が高いことが示されています。そのため、放射線治療とモガムリズマブを組み合わせることで、相乗的に治療効果を高めることが期待されます。しかし、放射線治療とモガムリズマブを併用した時の有効性や安全性はわかっておらず、それらを明らかにすることがこの臨床試験の目的となります。
なお本試験はVSEC臨床研究倫理委員会の承認を受けています。

対象

下部(膀胱、尿道)尿路上皮癌と診断されている(疑いでも構いません)

除外基準

  • すでに抗がん剤、放射線治療、外科手術を行っている
  • 水尿管・水腎症あるいは尿道閉塞がある
  • IRIS stage 3〜4の慢性腎臓病がある
  • 全身状態が悪く、2〜3ヶ月以内に斃死する可能性がある

内容

  • 本試験は無作為化二重盲検試験です。本試験への参加をご希望された場合は、無作為(ランダム)に試験群とプラセボ群に3:2の割合で分けられます。
  • 試験群は試験薬であるモガムリズマブ(商品名:ポテリジオ®)、プラセボ群はプラセボ薬である生理食塩水を試験開始日より4週間ごとに計3回静脈点滴で投与します。投与時には血液検査・X線検査・超音波検査を実施し、放射線治療と内科療法の併用治療の有効性と副作用を確認します。
  • ご自宅では犬の尿路上皮癌に対して一般的に使用されるNSAIDsであるフィロコキシブ(商品名:プレビコックス®)を1日1回、毎日服用していただきます。
  • 試験薬あるいはプラセボ薬を初回投与した1週間後より放射線治療を3週間かけて実施します。
  • 初回投与から12週間後に血液検査・X線検査・超音波検査を実施し、放射線治療と内科療法の併用治療の有効性と副作用の最終的な確認を行います。この12週間を試験期間とします。
  • 試験期間後は、フィロコキシブの内服を継続し、1~2ヵ月ごとの定期健診を行います。
  • 試験期間内に腫瘍の進行や重い副作用がみられた場合、獣医師の判断で臨床試験を中止することがあります。
  • ご家族様が臨床試験の中断をご希望された場合にはその時点で臨床試験を終了し、通常の治療に移行します。中断のお申し出によりご家族様が不利益をこうむることはありません。
  • この臨床試験はVSEC臨床研究倫理委員会の承認を受けています。

問い合わせ先

research-uc@vsec.jp
担当:[放射線腫瘍科]塩満 啓二郎/吉川 陽人 [内科]井上 亜希子